縁側対談

性の悩み ―ネコの緑平が発情期でして―

一恵園住人――河内悪太郎 一恵園住人 ―― 河内悪太郎

 「ホーイ」と呼べは、「お宅、とんとご無沙汰ですなあ」。返事が届く。一恵園随草と悪太郎行状記(続編準備中)は、本紙娯楽欄のお隣りどうし。

山野としえ女史が健筆ふるえば、片や悪太郎は、筆のすさぴか気の向くままに。と、ここへ来て「悪太郎はん、縮む愚息なんて露骨にかいてると、一恵園のオバちゃんにお叱りを受けまっせ。同じ男として、当方もヒヤヒヤ」の投書が舞い込んで―――ついに異色対談の実現となった。双方、油断めさるな。

 としえ わが一恵園の住人、ネコの緑平さんに近ごろ食欲がのうなりまして。それで診察してもらったら、これがどうも発情期のせいらしいんです。

 悪大郎 動物は周期的に発情するんですよ。人間はいつもやけど。

 としえ 獣医さんに訊いたら、そはにメスのおるところ、オスはいつも発情期ですよって。

 悪太郎 フーン。でもメスは周期的ですよ。

 としえ 人間でいえば思春期かしら。このごろ中学生でも性意識がすすんでるでしょ。

 悪太郎 北欧とかオランダ、ほんまにフリーセックスの国へ行くと、妊娠した牛をガラス張りの容器に入れて観察してるんですよ、性教育の時間なんかにね。ときには母親がこどもを達れてきて子牛が出かかってるところなんかを説明してるんです。こどもはそれを見て、ガンバレ、ガンバレと声援してる。これが本当のフリーセックスですよ。

 としえ 悪太郎さんは博識でいらっしゃる。

 悪太郎 日本の場合はあれはイカン、これもイカン。むこうでは裸の写真を文房具店で売ってますよ。店のオバちゃんに、あれがいい、これがいいとか注文して、気に入らんと、奥から出してきてもらう(笑)。学校でも「あんたらには、まだそういう(セックスの)能力がないから、してはいけない」と教えてますよ。

 としえ 去年は、制服警官の女子大生強姦殺人で年が明けましたけど、ことしはどうかしら。

 悪太郎 女性代議士が昭和三十四年に売春禁止法をつくってから、性に関する犯罪は激増してますよね。

 としえ わたしね、今度ネコの発情を見ていて(性の悩みは)こんなにつらいものかなあと、はじめて実感したんですよ。男女共学だと、隣りに女生徒はいるしね。

 悪太郎 女性から言わせたらね、男の体臭がモノすごく性的な刺激になるらしい。

 としえ だから私、むかしとは形を変え遊廓ってのが、本当は必要じゃないかと思うんです。

 悪太郎 間題は、これまでの遊廓というのは搾取したでしょ。暴力団の資金源になったり。なら国営にすればいい。

 としえ そう、私もそう思ってね。

 悪太郎 たとえば、オランダの「飾り窓の女」

としえ 女でも(フリーセックスの)けっこう好きな人があるんですってね。

 悪太郎 そらありますよ。男女平等。

 としえ そんな女性は国営の飛田遊廓に就職して、自分も遊べばいいと思うんですよ。そこでいろんな男性と出会ったりいろんな成長過程を教えてもらったら、自分にもプラスになるでしょう。女性代議士なんかは「男女平等でない」なんて切り捨てるけど、私は健全な娯楽であればいいと思う。

 悪太郎 いや、娯楽ではなくて、やはり青年層の性の悩みを解決することですよ(笑)。健全な性教育の機関として。

 としえ じょうずに言うわね(笑)楽しかったですよ、あの「悪太郎行状記」。

 悪太郎 あれもさし絵があると、もっと良かったね。谷崎潤一郎の「痴人の愛」みたいに。

 としえ さし絵を入れたら、きつうなりませんかね。

 悪太郎 ああいう刺激をね、紙面で与えて(読者を)教育していかにゃあかん。(笑)

     (つづく)

(八尾市民新聞、昭和54年1月1日版から)


総目次、 読後感