Title  登場人物

 A、B、C、D、皆老女、

 二十一日 八尾まつり初日

 D家上り框 午後三時

 A、B、連れ立って入って来て上り框にどたりと腰掛ける。

 A「今日は朝から産業展へ、行って来たよ。」

 B「お菓子屋さんが多かったね。」

 D「もう行って来たの、早々と、よかったわね。」

 A「お菓子類が安かったよ、いっぱい買って来て、孫達のおやつや。孫の喜ぶ顔見ただけで、満足。」

 Bさん、袋の口を開いて、中から色々な物を取り出す。軽石、菓子袋とりどり、子供の手提げに入った菓子、旅行用セット、アルミマット等々。

 二十二日、二日目

 同じ頃、同じ場所

 A「貴女、Dさんよ、今日は朝

市があると思うて、朝早くからBさんと行って来たんよ。明日やて、あほらし。」

 D「八尾まつりの、プログラム、よう読んで行ったらよかったのに、抜けてるなあ。」

 A「ほんまにそうや、それでも又産業展で買物して来た。」

 D「よう買うんやね。」

 B「安いから、しようもない買物ばっかり。」

 A「お金持っても死なれへんからな、皆喜ばしといたらええねん。」

Cさん表から入って来て、

 C 「Bさんお金おおきに。」

 B「いつでもよろしいのに。」

 C「いいええな、早う返しとかんと忘れまんがな。」

 D「真実に、年寄ってよう物忘れしますね。」

 C「何やらかやら財布はたいて、いい年して買物して来ましてん。」

 A「明日は河内音頭、踊らはるの、見せて貰いに行きまっせ。」

 C「こんな年寄り、しようおまへんがな。」

 D「なかなか、こんな時より出けしまへん。」

 二十三日  朝、同じ場所

 A 「Dさん、貴女にプログラムをよく読んでと、注意して貰うたのに、昨日夕方、郡上八幡太鼓、聞きに、又々八尾へ行って来たんよ。そしたら今晩やて。それでもまあ、ヤングフェスティバル聞いて来たけど、何とやかましいもんやね。前へ出たら耳ががんがん唸る、後ろへさがって、何も見んと、後ろ向きに聞いて来たんよ。」

 D「七十才の婆ちやんにしては、ようやるわ。」

 A「私音楽好きやもん、所がなDさんよ、今朝も又早うから、朝市に行って来たんよ。」

 D「まめやね、毎日続けて、朝と晩と、それで何買うて来たん?一人暮しのくせに。」

 A「それがよ貴女、早う行ったのにもう売り切れや、一体何ぼ程店が出たんやろ。山本から電車に乗って来たと、物入れ車引っ張ってどっさり買おうと思うて来た人も、『余り早う無くなり過ぎまんなあ、しんどい目して来たのに。』言うて一緒にぼやいてたんよ。もう一寸売ってやればええのになあ、折角来たもんに、例え大根の一本でも当るように。」

 D「そんなに品物少なかつたのか知ら、御苦労さま。」

 A「さあもう十時やから、ぼつぼつ今日のパレード見に行こうか。」

 D「あら、これから私と一緒に行くのん。」

 A「そうや、Bさんとこ夫婦も、朝から病院へ行って、帰りにパレード見るんやて。」

 八尾市庁前さざんか通り。

 Aさん三回日の、産業展行き。

 A「昨日Bさんとこの若奥さん、いいフライパン買うて来やはって、どうも安うてええから、私も買うとくの。」

重いフライパン一 つ、ごそごそと袋に入れて、茶粥コーナーヘ。

 A「零囲気、よう出したはるね、花なんか植えて、床几並べて。」

 D「売れて売れて、焚くのが間に合わんのやて。」

 A「そうやろ、時間がかかるし、もっと大釜でないとあかんわ。」

 D「二杯、よばれられへんよ。」

 A「お香こがおいしいね、そやけどお婆ちやんばかりでは、気の毒で落着いて、よばれていられへんわ、それに年寄りは何となく、まだるっこいしね、自分も年寄りやからつくづくそう思う。」

 D「そうやね、やっぱり若い人の、お手伝いが欲しいね、明日くたびれて寝やはれへんか知ら。」

 A「久し振りに、おいしかった事、今晩煮(た)いて見よ。」

 さぎんか通りを歩きつつ、

 A「この辺が一番ええ位置やない?、本部の前やし、映写の自動車も止めたあるし。」

 D「そうやね、余り後ろから押されんように、並木の柵の前に、立ってようか。」

 十二時から一等場所に立ちん棒、パレードが始まって来ると、それでも押される事、割り込まれる事、そして大通りには、ハッピを着た女の人が数人、自分達は役員だと言った素振りで立ちはだかる、だらしなくつっかけをひっかけた足元で、聞けば迷子係だと、迷子係なら歩道の方に注意をこそと思う。

 始めての八尾まつりだと言うのに、次々に整然と行進が進んで来る。こちらは手を叩くので、掌が赤くなって、ほてる。

 D「音楽はいいね、中学生のブラスバンド、よかったわ。」

 A「ぼんぼんバレエもよかったよね。」

 D「クィーンヘの大好奇心どう。」

 A「同じ人間やのにね。」

 D「小学校の運動場で、これだけ集まって、ようよじれんと、出て来やはるね。」

 A「ああしんど、歩いてるより立ってる方がよっぽどしんどいわ。

もう帰ろうか。」

 D「そうね、帰る道々で、河内音頭のパレード見られるから。」

 A「Bさん夫婦、どこで見たはんのやろ、会わなんだね。」

 D「Cさん来やはったわ。」

 A「どこどこ?、Cさーん」

 D「聞こえへん見たいね。」

 A「やっぱり緊張したはるのかな」

 D「夜また郡上八幡太鼓見物行くの?」

 A「行き度いけどもう風呂へ入って寝る、朝行って晩行って、三日間出づっぱりやもん。お金やる言わはっても、もうよう行かんわ。」

 D「バス代にして九百円分、歩いて通ったんやからね。」

 A「ほんまに、祭りてしんどいなあ、それでも楽しかった。気も若うなったし、演出しやはる人は、大変やったやろうね。」

 D「始めての祭りやのに、うまい事いってよかったわ、それにお天気もよかったし、降らず照らずで。」

 A、D「ああしんどー」

           幕


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