河内七墓詣りあべこべルポ

 七墓詣りひと言

Cシャツ「そのまゝで皆さん一と言づつ」

J「あっちの方から先にしてえ」

Cシャツ「まあまあそういわんと、始めてですか」

J「はい。ポックリ死ぬことより歩くことが好きだから。老いた母のかわりと思って」

Cシャツ「まだ若いですからなあ」

S「高安城を探る会でよくこの山を歩くから、この辺の歴史をより深く知りたいと思って。まだポックリなんてとてもとても。」

Cシャツ「この中で一番年長とお見うけしますが、おいくつですか」

I「七十一才です」

Cシャツ「何回お詣りです?」

I「四回目です。家は孫と息子と四人暮しで、嫁がいてませんので、娘や他の者に世話をかけんようにまいってます」

Cシャツ「ポックリ寺へ詣られました?」

I「はい。参りました。でもこちらの方がきき目があるように思います」

O「私もぽっくり寺へ詣りました。けどこうして暑い日に歩く方が値打ちがある、結構なことや思います」

Cシャツ「それではポックリ寺に悪いみたいですな」

H「二回目です。今のうちに道を覚えといて、元気な間に詣らして貰っておこうと思って」

Cシャツ「一番若いのに何できやはったん?」

K母「二回目です。好奇心と護衛です」

Cシャツ「ごえい?」

K母「荷物持ちですよ」

Cシャツ「何を願わはったんです?」

K母「現在の幸を感謝しただけです」

Cシャツ「始めてですか」

Y「はい始めてです。私にはまだ縁がないことですけど、お義母さんが『八回詣らして貰ったので貴女もいったらどう?』っていわれたので参らして貰いました」

Cシャツ「お義母さん元気ですか」

Y「いたって元気です。私はまだ若くて程遠いけどぼつぼつためとこうかと思うてます」

T「迷信であろうが何であろうが物はためし、七回詣ろうと思ってます。もう六回目ですもの」

K母「百年後、二百年後まだ墓参りという行事じたいがあるかなあ」

T「それはあると思う。そうそう世の中変らんもんよ」

K母「私、死というものにすごく恐怖心持ってる。この世の中に自分がおらなくなるということが物すごく不安で、寝てあくる朝生きられるかが不安で、寝ないで起きている」

T「誰でも死は恐ろしいよ。年を取れば年を取る程、不思議に死にたくないもんよ。それでも貴女、ちゃんと寝てるやんか」

K母「昼間疲れるもん、いつの間にか寝てしまう。それでも朝起きられたなあと、一日中あわただしくすべてを忘れて、夜になると体が凍てつくように思う」

T「一寸病的やね貴女、若いのに。誰でも一時はそんな事考えるみたいよ、私も考えたよ、でもいかなる人にも死だけは求めなくても向うから平等にやってくるんやから、今日を充実して生きたらええねん」

K母「私、世の中見ていきたいから死にたくない。それでも死は平等やと思う。唯その死をどうして迎えられるかや、死に向って一歩一歩、歩いていることを意識して、毎日を大切に送っている人こそ、価値ある人やなあ」

T「それで結構、貴女も毎日を充実して暮しよ。明日死んでもいゝように」

K母「何せ私生命線短いから、余計気にするのよ」

T「六十迄だんなあと八卦見にいわれて、お母さん気にしてたのに無事に七十才も生きてるやんか。

当たるも八卦当らぬも八卦気にすることない。八回も七墓参りしやったし、隣りのおじいちゃん三十三回も参って齢九十二才やんか」

K母「おじいちやん元気やな」

T「ひょつとしたら、沢山参る程長生きと違うか?貴女も今からやったら三十三回位参ってみ、九十迄生きられるか分れへんで」

K母「そんなこと――」

T「やってみな分れへん。信じて実行してみることやな」

 おしやべり中止

河内七墓詣りあべこべルポ

J「大竹へ下りますよ。愛宕塚の前を通って」

 鶴の一声皆、ぞろぞろと重い腰を上げ、一人ずつしか通れない細い草の道を一列に下っていく。と、

青シャツ「その辺からもう一度登ってきて下さい」

Cシャツ「この辺からでええか?」

青シャツ「もう少し下から」

 臨時エキストラ、文句もいわずに廻れ右して、又ぞろぞろと登る。

皆登った所で、

青シャツ「はい、結構でした」と、

 今度は先頭で、タッタッと、青白一体で下っていく。時々立止って同じようにカメラを向ける。我々は其の後をぞろぞろ、

K母とY「一寸、小用で」と、

 草の中へ残留。Cシャツは上へ引き返す。

 大竹のバス停へ着いたのに、YとK母と姿見せず、

J「大竹へ下るというたけど、道迷わはったかしら?」

T「そうよね。去年下った松の馬場を通って、水越へ下りてるのじゃないかしら?」

J「そうかもしれませんね」

T「Cシャツさん、ちょっと水越迄車で見にいってやって頂戴な」

Cシャツ「そうしましょう」

 運転手さん車発車。その行方を追っていると、彼方に黄色いTシャツのK母の姿見える。こちらに向って歩いている。

T「あゝきたきた」

K子「お母さんが来た」

 迷子になったのはお母さんで、K子さんやっぱり心配してたらしく明るい声をたてる。

 目の前に車が止って二人下車。

一台乗り遅れたのにすぐバスがきて一同乗り込む。

 そろばんチャンネル班三人も乗車、車内の先客キョロキョロ、いくらキョロキョロしてもスターらしいスターはいない。本日の出演者は気楽なことや。誰も見物人は集まってけえへんし、こちらも、

 「誰を写したはんねんなあ」という顔してたらええから。


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