河内七墓詣りあべこべルポ


キャスト
スタッフの命名
ひとくさり


 日時   昭和五十七年八月七日 土曜 午前九時

 集合場所 近鉄恩智駅前

 目的   河内七墓詣り ルポルタージュ撮影

 出演者  女性九名 集合者全員

 内訳   Oさん、Hさん、 Iさん二名、Sさん二名、
    Yさん三名、 頭文字をアルファベットで排列
    すると、かくも同し符合が並ぶ結果となった。

 さらば名の儀は如何?と考えてみるにやはり重複が、H三名、T二名となる。案外日本語は複雑多岐、意味深長であることに感心する。が、感心ばかりもしておれない。さればいかなる符牒を並べれば簡単且明瞭ならんか。ええい、どこも重複しないアルファベットを並べることにしょう。

 J、S、O、l、H、T、K母、K子、Y、これで本日のエキストラ全員なんとか合点ができることであろう。

河内七墓詣りあべこべルポ  少し時間が遅れて改札口をでると、駅前広場の向うの方に、頑丈な三脚が立てゝある。丁度名所旧蹟で記念撮影を仕事とする人が客待ちをしている姿に似ている。

 こんな所で記念撮影もなかろうし、道路の測量でもしているのかなあと、目の隅に入れて、高安城組のJさん、Sさん、Oさんと挨拶を交す。

T「遅れてすみません。では出発しましょうか」

J「はい。それではいきましょう」

 山の手、恩智、垣内、神立の三墓地を案内して下さるJさんの、まろやかな生きいきした後ろについて、歩き初めようとすると、

 「ちょっと待って下さい。先づ記念撮影をしていきましょう。ここへ並んで下さい」

 そろばんチャンネルのおじさんというにはまだ若くて気の毒だし、プロデューサーと呼ぶ程の番組ではなし、いろいろ聞くことははばかられるし、だとてこんな機会は、そうざらにあるものでもない。

 ままよ、こちらもルポ撮影の取材でもやるか。取材する人される人、そしてその又取材撮影をあべこべにルポする人。

 「ややこしいが面白いなあ」が今駆けだしのあべこべ取材人、何も取材をしない間に、駅の向うの例の三脚に向って、まばゆい日向に並ばされ、

 「はい、チーズ」

T「何だあの三脚に狙われていたのはこちらか。さすがはプロ」

 最初のつまづきで一番大事なことの取材はおじゃん。デレクター?プロデューサー?呼び方一つも不明。

T「インタビューする人とカメラマンと、どちらが偉いのかなあ?」

K母「どっちでもええやんか」

T「そんなら一番太い順からいこか。インタビューする人Cシャツさん、カメラマン青シャツさん、デンスケさん、白シャツ君」

K母「うん、それがええ、その通りやもん」

 坊っちゃん≠フ向うをはって、先づはシャツの色で撮影班の呼び名をつける。

T「あの重そうな電源みたいなの肩にかけてる若い人、何て呼ぶのかなあ!助手さん?」

K母「デン助さんでもええがな」

T「まあな、新らしい機械の智識は子供より劣りやから」

J「この橋が母(おも)の木橋。この辺一帯を母の木と呼びます」

T「母の木という木が生えてたの?」

J「そんな木あらしません。土地の呼び名です」

T「感応院の重文十一面観音さんの木やね」

J「そういゝますけど、あれは榧の木です」

H「何したはんのかしらあの人ら?ついてこな道分らへんのにね」

 皆、ちらちらと後ろを振り返るが車の影見えず。

O「遅いですね」

S「車やからすぐ追いつかはるわ」

J「八王子神社、ハットさんの前から登りましょ」


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